私と母と鹿島アントラーズと

母「ただいま〜。あ、インスタみた??」
私「おかえり。みた、みた!あの聖真くんかっこよかったね〜!!」

みたいな会話が日常になった。
いや、インスタ依存の生活を告白しているわけではなく、私たち家族の日常に鹿島アントラーズが存在するようになった。

兄が就職してから母と私の2人での生活はいつもどこか寂しくしんみりした空気が流れていた。「ただいま〜。」「おかえり。」のあとに何も続かないことだってたくさんあった。それが今は毎日のようにアントラーズについて話しているし、一緒にスタジアムで飛び跳ね、テレビの前で叫んでいる。

鹿島アントラーズは私たち親子の救世主だった。

アントラーズの試合を観るようになったのは2015年シーズンから。きっかけはざっくりいうと、好きなアイドルの仕事を追いかけていたら行き着いた先が柴崎岳選手で鹿島アントラーズだった。初めて現地観戦したのは2015年4月25日の神戸戦。サッカー好きの友達が周りにいなかったからお母さんを誘った。付き合わせちゃってゴメンと思いながら…。試合は1-2で負けたけど、サッカーのルールだって全然分からなかったけど、ただただ楽しかった。美味しいスタジアムグルメに感動し、なによりスタジアムの雰囲気が最高だった。休みの日は家でゴロゴロすることが大好きで、スポーツとは無縁の生活を送っていた私には、サッカー観戦という異文化との交流はとても刺激的でドキドキワクワクが止まらなかった。男女問わず、小さい子どもからおじいちゃんおばあちゃんまでいろんな人が1つのスタジアムに集まって、チームに声援を送る光景にとてつもなく感動した。私がゴロゴロ寝ている間にこんなにも熱くて面白い世界があったなんて…!!バンザ〜イ!君に〜会えて良かった〜!って心の中のトータス松本が熱唱しちゃうくらいには興奮していた。そして帰りの車の中ではずっとサッカー観戦デビューの話で尽きなかった。

「楽しかった〜。次は勝つよ絶対。」
「次はお腹すかせてこなくちゃね。」
「次はもつ煮並んでみよう。」
「楽しかったね。」「うん、楽しかった。」

心の中では号泣しながらガッツポーズだ。お母さんも 楽しんでくれていたことが嬉しかったし、何より自然と次に向けて話していたことが嬉しかった。それから予定が空いてる日はサッカー観戦を入れ、そしてだんだんサッカー観戦を基準に予定が埋まるようになった。もう沼にズブズブの毎日だった。

サッカーのルールを勉強し、選手の名前を覚えて、鹿島アントラーズの歴史を学び…。知れば知るほど、サッカーが、鹿島アントラーズが大好きになった。岳さん目当てで観ていた試合もいつしか鹿島アントラーズを応援するようになった。好きな選手もどんどん増えて来季のユニフォームは誰にしようかななんて悩みも出てきた。嬉しくて深刻な悩みだ。どの選手もみんな魅力的すぎて困る。本当に困る。次々続々一体全体どうなっちゃってるんだ鹿島アントラーズ…。ありがとう。ありがとう。

最初は私の付き添いというスタンスだったお母さんも今やユニフォームを着て、バリバリ応援している。なんなら私より試合のスケジュールを把握していて悔しいくらいだ。この前も隣の部屋から鼻をすする音が聞こえたから何事かと思ったらCS決勝の第2戦の録画を観ていた。そして泣いていた。そんなにハマっていたんかい!とつっこまずにはいられなかった。嬉しかった。鹿島アントラーズを応援するようになってから親子で過ごす時間が格段に増えた。怒られて気まずいときだって、試合の時間になれば同じ部屋に集まって、一緒に叫んでいるし、手を取り合って喜んでいる。試合が終わるころには気まずさなんてぱっぱらぱーだ。最高だ。本当にありがたい。前みたいになんとなくどよ〜んとした週末とはオサラバして活気に溢れた最高の週末を送っている。

私は多分あと1年でこの家を出る。今みたいにお母さんと親子でサッカー観戦というのも難しくなるかもしれない。だからこそ、行けるうちにたくさん行きたいし、存分に楽しみたいと思う。鹿島アントラーズは私たちに一緒に楽しむ喜びを教えてくれた。しんみりした空気を取っ払ってくれた。生きる活力を与えてくれた。あの日、神戸戦の日お母さんを誘ってよかった。思いきってカシマスタジアムに行ってよかった。最高の場所だと思わせてくれた選手、スタッフさんそしてサポーターの皆さん本当にありがとうございました。

鹿島アントラーズと出会ってからの2年間毎日が楽しい。とてつもなく楽しい。辛いことがあっても、夢生さんの奇声を思い出せば笑えるし、優磨くんの強気を見てたら自信が出てくるし、聖真くんの笑顔には癒される。アントラーズのおかげで人生の中で楽しいと思える瞬間が何十倍、何百倍にも増えた。応援を始めてから2年間で、ナビスコ杯、2016年1stステージ、そしてCSと3度の優勝を味わうことができた。でも欲張りだから、もっとたくさんの頂きの景色を見たいし、もっとたくさん歓喜の瞬間に立ち会いたい。もっともっともっと…。だって人生でこんなに熱くなれる場所はないし、こんなに最高な空間はない。そのためにこれからもできるだけスタジアムに行きたいし、行けないときは自宅から声援を送りたいと思う。

「次はゲーフラにチャレンジじゃない?」ってすすめてくるお母さんと一緒に。